与野党の動き

データ戦略が「国家の命運を左右」 – デジタル・ニッポン2024の概要

自民党デジタル社会推進本部(本部長・平井卓也元デジタル改革担当相)が取りまとめた、デジタル政策の国家戦略を示す提言「デジタル・ニッポン 2024 -新たな価値を創造するデータ戦略への視座-」が、自民党政調審議会で5月21日に了承された。そして、23日には岸田首相に提言が提出された。

人工知能(AI)やweb3などの新技術が牽引するデータ戦略について「データの蓄積・利活用が国家の命運を左右する」と重要性を強調したほか、マイナンバーカードのさらなる利便性向上、個人情報保護制度の徹底検証などが柱。6月の策定を目指す経済財政運営の指針「骨太方針」など政府政策への反映を目指す。

データの利活用では、これまでの新型コロナウイルス禍や1月の能登半島地震など、これまで危機が起きるたびに不備や遅れが明らかになったと指摘。固定的タスクの集合としてのみでは不十分だとした。技術やサービスの急速な進展に柔軟に対応することや、人材育成やセキュリティ戦略との連携を重視。これまで整備してきたインフラを活用し、新たな技術や社会変化を内在化した「プロセス指向のデータ戦略」と銘打った。
 

自民党の資料より引用

 
マイナンバーカード関連では、マイナンバー情報連携のメリットをすべての関係者が享受できるようにすることを掲げた。スマートフォンへの搭載の早期実現など、マイナンバーカードのさらなる利便性向上と幅広い世代における活用を支援。ベースレジストリ、政府相互運用性フレームワークの整備のほか、自治体や民間のサービスとの連携推進をうたった。今年1月の能登半島地震を教訓として、避難所や被災者の把握におけるデータ活用の可能性を探ることや、正確性を高めることなどを課題と設定。「Need to know」から「Need to share」―を掲げた。

国や地方のデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に関し、自治体システムの標準化推進、国と地方のデジタル基盤の共通化、デジタルマーケットプレイス(DMP)による調達簡素、費用分担などの検討、地方ネットワークの抜本的見直しなどを列挙した。

データ戦略の司令塔としてのデジタル庁の強化については、デジタル法制局によるシステム・制度・業務の一体的見直しの推進のほか、デジタル化により目指す社会を示すための広報体制の充実も重要だとした。中長期的には、企画能力向上とGov Tech Japan構想(仮称)推進を挙げた。

個人情報について本人と社会に恩恵をもたらす「価値の源泉」であると明記。個人情報保護制度の見直しは「マルチステークホルダー」による信頼ある議論を経るべきだとして、従来の「3年ごとの見直し」では十分な検証はできないと強調した。その上で「規制一辺倒ではなく、まずは運用状況の分析が必要」とした。度重なる改正により個人データの定義・管理が複雑化している上、個人データの第三者への提供に関わる「同意疲れ」への対応も必要だとした。

匿名加工されたデータの統計利用への促進や、生成AIなどの新技術への理解がなければ成長を阻害すると懸念。「健康・医療、こども、防災」など分野に応じた規律を検討することの重要性も訴えた。経済界の反対を念頭に団体訴訟制度には慎重な姿勢を示し、課徴金についても欧州連合(EU)の運用状況をよく踏まえて検討するべきだとした。個人情報の保護と利活用の両方の実現のため、個人情報保護委員会の機能・体制を含め抜本的な制度見直しを強く求めた。

このほかデータの連携には信頼性が必要だと強調。プロセスに対する信頼性や透明性を備え、ユーザーが親しみを持てるサービスにすることの意義を明記。サービスの継続的改善には組織への信頼がポイントだとして、マルチステークホルダーによるアジャイル・ガバナンスやミッション・ビジョン・バリュー(MVV)の浸透を図るべきだとした。

関連サイト

プロセス指向のデータ戦略をデジタル社会推進本部が提言策定 – 「デジタル・ニッポン 2024」の概要提言全文など。自民党

2020年からの「デジタル・ニッポン」の提言

「令和の大行政改革」をデジタル社会推進本部が提言 – 2023年版の概要
デジタル・ニッポン 2022~デジタルによる新しい資本主義への挑戦~
デジタル・ニッポン・アンリミテッド2021
デジタル・ニッポン2020

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