インタビュー

政治資金制度改革:国民民主党・玉木雄一郎衆院議員に聞く

企業・団体献金は禁止より透明性向上、参院選も過半数割れ目指す

国民民主党は今年10月の衆院選で、当初の各種予測を大きく上回り、議席を4倍増させて28議席を獲得した。「対決より解決」を掲げ、与野党問わず政策の実現を最優先に協力する路線を訴え、一定の支持を得た形となった。

一方、自民、公明両党の連立与党は、政治資金収支報告書の不記載問題(いわゆる裏金問題)が大きな逆風となり、過半数を割り込むという大敗に。

その結果、今国会では先の通常国会に続いて政治資金制度改革が大きな焦点となっており、国民民主党が「キャスティングボート」を握る展開にもつれこんだ。

こうした状況を国民民主党はどのように受け止めているのか。政策ニュース編集部は、国民民主党の玉木雄一郎衆院議員に聞いた。

インタビューに応じる国民民主党の玉木雄一郎衆院議員

国民民主党・玉木雄一郎衆院議員の発言のポイント

・政策実現最優先とする国民民主党の方針は政治資金改革でも発揮できている
・企業・団体献金は全面禁止して無理に例外を設けるより、透明性向上が求められる
・国民民主党は政策活動費の支出を止め、旧文書通信交通滞在費の使途も公開済みだ
・政治資金を監査する第三者機関を国会に設けるべきだ
・政党は多額のお金を扱うが一部を除き法律に定めがなく、「政党法」が求められる
・政治資金で違反があった政党に対し、政党助成金減額などの規定を設けるべきだ
・政治資金パーティー券購入は入金をクレジットカードか銀行振り込みとするべきだ
・政治資金収支報告書は検索しやすいようデジタル化を進めることが必要だ
・国民民主党は来夏の参院選でも議席増を狙い、参院でも与党過半数割れに追い込む

※聞き手:政策ニュース編集部
 インタビューは2024年12月9日に実施しました

「誰と」ではなく「何を」やるか

― 政治資金規正法再改正が今国会の焦点となり、各党がいろんな法案を出し、論戦も激しくなってきた。

(玉木雄一郎氏)国民民主党は公明党と、政治資金の監査などを担う第三者機関「政治資金監視委員会」を国会に設置する法案を共同提出した。政治とカネの問題は与野党を超えて取り組まなければならない。きちんと合意を得ていくという新たな政策決定のプロセスは、政治とカネを解決する場でこそ生かすべきだと思うので、今回、公明党と一緒にできたことはよかった。

一方で政策活動費の廃止については、他の野党の皆さんと計7党で一緒に法案を国会に出している。われわれが言ってきた「誰とやるか」ではなく「何をやるか」ということを重視して判断していくという方針が、この政治改革でいかんなく発揮されている。

― 政治資金改革の観点から、今国会での与野党の姿勢をどのように見ているか。

(玉木氏)自民党派閥の政治資金収支報告書への不記載問題、いわゆる「裏金問題」で議論がずっと続いている。残念なのは、主な争点が「企業・団体献金の廃止」になってしまい、それで立憲民主党と自民が真っ二つに分かれていることだ。そもそも裏金問題は、政治資金パーティー券の収入についての不記載問題であり、いかに政治資金の透明性を確保していくのかということだった。

しかし、なぜか今、あたかも企業・団体献金を禁止するのかしないのかという話だけのようになっている。争点としてもったいない。ほかにも政策活動費をどうするのか、あるいは調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)をどうするのか、そしてわれわれがずっと言ってきた第三者機関について設置や中身をどうするのかということについて、突っ込んだ議論があまりなされていない。

パーティー券に関して言うと、例えば外国人の購入規制についても我々国民民主党は提起してきた。しかし、争点が若干、企業・団体献金のみに偏りすぎているのではないかと心配だ。

「政治団体を除く」は抜け穴

(玉木氏)企業・団体献金の禁止を訴えている立憲民主党も禁止対象から「政治団体は除く」と言っている。衆議院法制局によれば、企業による政治献金の適法性が争われた八幡製鉄政治献金事件の1970年の最高裁判決で、個人のみならず企業にも政治活動の自由があって献金できると認められている。

立憲は企業による献金の全面禁止が憲法に違反するのではないかとして、政治活動の主体、つまり政治団体を除いたと言っている。全面禁止ができないならば、透明性をどのようにより高めるかを議論した方がいい。

無理に憲法違反だからといって「抜け穴」のように政治団体を除くのではなく、例えば個人と企業を同じようにとらえ「個人だと政党に対する寄付は上限2000万円までだから、企業も上限2000万円にしよう」という考え方もできる。あるいは企業・団体献金を受け入れることができるのは現状では政党の支部も含めてとなっているが、政党の本部だけにした上で、「政党法」という、いわば政党版の会社法を作って現行より厳しいガバナンスを課すという方法もあり得る。

立憲案は全面禁止するのは憲法違反に当たるからといって例外をつくっている。しかし、禁止か禁止じゃないかだけではなく、どうやって透明性を高めるか、また多額のお金で政策がゆがむことを防ぐことが必要なら上限規制を入れるとか、もう少し立憲と自民が補い合うような議論をした方が生産的だ。

― 政党法に言及があった。石破茂首相も就任よりかなり前から必要性を説いてきたが、実現していない。

(玉木氏)これだけ多額のお金を扱うのにもかかわらず、「政党」については、憲法にも法律にも書いておらず、政党交付金を渡すときだけ「政党助成法」の中でだけ出てくる存在になっている。そうではなく、政党とはどういうガバナンスの仕組みがあって、どうトップを決めて、お金の出し入れについてどういう報告義務がかかるのかを定める法律が必要だ。

会社には会社法という法律があって、会社をつくるためにはどういう定款が必要で、構成員はどうで、取締役はどうと全部決まっている。しかし政党には同様の法律はまったくない。政治活動の自由との関係はあるものの、きちんと作る必要があるのではないか。

その代わり、厳しいガバナンスを課せられている組織、政党だけに企業から献金を受けられるようにするとか、企業献金の上限は個人と同じ2000万円以上にするとか、現実的で具体的な統治の仕組みを入れるべきだ。

「非公開かつ非課税」のお金をなくす

― 国民民主党は先の衆院選前に出した政策の中で罰則強化を重視している。

(玉木氏)われわれが出していて、他党が出してない一つの争点は、今回のような大量の不記載、法律違反をした政党に対して、政党助成金をそのまま全額入れていいのかという問題提起だ。ぜひこれは実現したい。

現行法では政党や政党の所属議員が、どんなに悪いことしても政党助成金は全額振り込まれる。これは法律を犯した場合は、政党助成金を減額する規定があれば最もガバナンスが働く。これは他党とは違う点であり、国民民主党は単独で法案を出す予定だ。

あともう一つは公明党と一緒に法案を出したが、政治資金を監査する第三者機関を作ることだ。政治が自らを厳しく律するルールを、政治が決められないことが分かった半年だったと思う。収支報告書をちゃんと書いているか調査する権限と、こういうふうに制度を変えなさいという提案権という二つの権限を持つ第三者機関を、できるだけ早く国会に作るべき。それが早道だ。

― 政策活動費については。

(玉木氏)われわれは、そもそも政策活動費は昨年から支出を止めている。使い道の不透明な非課税のお金はやめようということだ。政治活動として非課税の恩恵を受けたいのであれば全面公開し、公開できないのは課税対象にするべきだ。その意味で、非公開かつ非課税のお金をなくすために政策活動費を廃止すると訴えてきたし、実践してきた。

ブロックチェーン技術で履歴保存

― いわゆる調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)や、政治資金パーティー自体の規制強化という論点もある。

(玉木氏)国民民主党は、すでに旧文通費の使途を公開している。他党も早く公開すべき。立憲も「やるやる」とは言っているが、まだ公開していない。実践するという意味では、立憲は旧文通費を公開して、迫力を持って与党を攻めればいい。われわれは政治資金パーティーについては全面禁止の立場にはないけれども、透明性を高める必要がある。

今回問題となった「裏金」にできないよう、原則履歴が残るクレジットカードと銀行振込で入金し、現金そのものは扱わないようにすべきだ。全部、帳簿に入りと出が残るようにし、事実上献金と同じなので外国人による購入は禁止する。これまで20万円以上だった公開基準を、5万円にすべきだという考えだ。徹底して透明性を確保することで改革を提案してきた。

― 政治資金収支報告書について透明性確保のためにデジタル化を推進すべきだという考えがある。

(玉木氏)これも速やかにやるべきだ。二つあって、まずは現行のような「PDFにしてホームページで公開しているからデジタル化している」というレベルではなく、検索可能なデータとしてオンラインで提出し、データベース化するということが大事だ。例えば、個別の企業名で検索すれば、その会社が政治献金を出している議員の一覧が出る仕組みだ。データベースであればさまざまな分析ができる。

もう一つは、ブロックチェーン技術を使うことによる改ざん防止だ。改ざんの有無や変更履歴が全部残るようにして提出を求めればいい。デジタル技術を使えば、国民やメディアによる分析がより容易になり、資金の流れの透明性が高まる。世の中ではインボイスやマイナンバーなど、デジタル化はどんどん導入されており、国会の領域でも頑張ってデジタル化を進めるべきだ。国会議員の秘書さんたちは大変だが、もはや時代がそうなっている。

旧文通費公開・政策活動費廃止・第三者機関設置は年内に

― 政治資金制度改革のスケジュール感については。

(玉木氏)政治資金規正法の再改正は、できるものからこの国会でやるべきだ。合意が得られないものを求めすぎて、結局何もできないのは最悪だ。今国会でやるべきは、旧文通費の公開、政策活動費の廃止、第三者機関の設置だ。この三つはこの臨時国会、年内に必ずやるべきだ。意見が分かれて年内にできなかったものは、来年の通常国会で法改正を行い、その審判を来夏の参議院で仰ぐということになる。

― 自民党は外交などにかかわる部分について政治資金の支出の一部を非公開にすることを主張している。

(玉木氏)そういうものは基本的に官房機密費でやったらいいと思うが、そこはまさに与野党で合意すべきものだ。非公開にすべきところ、どこを黒塗りにするのかの妥当性については、第三者機関にチェックしてもらうのも一案だ。その意味でも第三者機関を作るべきだ。

― 今国会は近年まれに見る少数与党という状況の中で始まった。与野党議論の状況、それから石破茂首相、石破政権の対応について、どう見ているか。

(玉木氏)石破首相は少数与党でありながら何とか政権運営をされている。ただ「石破カラー」は、本来より「脱色」している感じはする。例えば、われわれが公約として掲げた、所得税が課税される「年収103万円の壁」の引き上げは、多数の国民が求めているのは明らかであり、大胆に取り入れることで石破内閣の支持率も上がるのではないか。先の衆院選で国民が選択したのは、つまるところ自民党、公明党だけで勝手に決めては駄目だということ、それが「民意」だ。

しかし一方で、比較第一党は自民党に与え続けている。そしてわれわれ国民民主党は「対決より解決」を選挙で堂々と訴え、大きな支持をいただいた。与野党ともに責任を負っていて、与党はさまざまな意見を広く取り入れなさいということが国民から求められている。野党は逆に、与党が過半数を割っているからといって何でもかんでも反対し、法案や予算案を止めてばかりだと、これもまた批判を受けるはずだ。

「対決より解決」という立ち位置は、これまでは与党でも野党でもない「ゆ党」と非難されるしかなかった。しかし、それを訴えて4倍増となる28議席をいただいたのだから、与野党で合意を丁寧につくり、建設的に政策にかかわりなさいと託されたということだ。与党が少数となり、いわゆる「宙づり国会」(ハングパーラメント)と言われるが、与党にも野党にも新しい責任が求められたということだ。国民民主党は積極的にその役割を果たしたい。

「連立」も「8頭立ての馬車」も民意にあらず

― 今後は仮に中長期的であるにしろ、国民民主党として政権を取りに行くプロセスになると思う。国民民主党が中枢となって政権を取るのか、政権の一翼を担うのかはともかく、政権獲得に向けての戦略を聞きたい。

(玉木氏)先の衆院選で議席を増やしたといっても、今でも衆院で28議席しかないのは事実だ。やはり次の参院選でも議席を増やし、国会の中で中核的な役割を果たせるようになるのが当面の目標だ。今の時点で政権を取るとか取らないとか言っても現実味はない。まずは参院でも衆院と同じように自公を過半数割れに追い込みつつ、対決より解決のポジションで議席を増やしていく。それが今の民意に沿った行動だと考える。

― 参院においても自公を過半数割れに追い込むと。

(玉木氏)「自公だけで勝手にするな」というのも大きな民意だと思うが、すぐに政権交代してほしいという感じでもない。世論調査で面白いのは、今までは国民民主党について尋ねた設問は「与党であったほうがいいのか、野党であったほうがいいのか」という選択肢だったのが、最近はNHKでも「政策ごとにやればいい」という選択肢を用意してくれている。それが一番大きい。

民意は、別に国民民主党に「与党になれ」、「連立を組め」とも言っていないし、野党を全部まとめて細川政権のような「8頭立ての馬車」も求めていない。国民の意思に沿う政策を、今のポジションを使って実現するとの方針に従い、次の参院選で議席を着実に増やしていきたい。

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