第216臨時国会が28日に召集され、石破首相は29日、衆参両院の本会議で所信表明演説を行いました。
「外交・安全保障」「日本全体の活力を取り戻す」「治安・防災」の三つの重要政策課題に加え、「経済対策・補正予算」や「政治改革への対応」を柱とする政権運営の方針を掲げ、比較第一党として、自由民主党と公明党の連立を基盤に、幅広い合意形成を重視しながら現実的かつ具体的な政策を推進する姿勢を明らかにしました。
三つの重要政策課題
■外交・安全保障
国際社会が直面する複雑な課題を背景に、抑止力の維持・強化と各国との対話を柱とする現実的外交を展開すると強調しました。首相は日米同盟のさらなる深化を掲げ、特に来年発足するトランプ政権との協力を深化させる意向を示しました。また、中国や韓国の首脳と積極的に対話し、日中間では経済や人的交流の拡大、日韓間では国交正常化60周年を契機とした関係改善を目指します。加えて、国内防衛力の抜本的強化、自衛官の充足率改善、サイバーセキュリティの向上などの具体策も表明しました。
■日本全体の活力を取り戻す
「地方創生2.0」を掲げ、地方のポテンシャルを引き出すためにデジタル技術の活用や規制改革を推進し、地方創生交付金の倍増や農林水産業の高付加価値化を進める方針を示しました。経済面では、賃上げと投資主導型の成長を促進し、最低賃金引き上げや国内投資の拡大を目指すと述べました。また、「全世代型社会保障」の構築を通じて、高齢者や女性、障害者を含む多様な世代が能力を活かしながら支え合う仕組みを整備し、安心して暮らせる社会の実現を目指すと強調しました。
■治安・防災
国民の安全確保を最優先課題に据え、災害対策を強化。避難所基準の向上や防災庁設置に向けた準備を進めます。また、「闇バイト」による犯罪への取り組みを強化し、治安の維持に努めるとしました。
経済対策・補正予算
首相は、国民生活を豊かにするため、「国民の安心・安全と持続的な成長」を目指す総合経済対策を発表しました。特に最低賃金の引き上げや、中小企業の経営基盤強化を通じた賃上げ推進を柱に据え、物価上昇を上回る賃金上昇の実現を目指すとしました。また、エネルギーや食料価格の高騰に対応するため、低所得世帯への給付金支援なども含まれています。
さらに、雇用環境改善の一環として、「年収103万円の壁」の引き上げを令和7年度税制改正の中で検討すると表明。これにより、就労意欲のある人々の所得増加を後押しし、経済成長につなげる考えです。全体として、経済の活性化と安心感の両立を目指した取り組みが強調されました。
政治改革への対応
先の選挙結果を「国民からの叱責」として受け止め、政治改革への決意を表明しました。具体的には、議員に支出される政策活動費の廃止や、第三者機関による政治資金の監査制度の設置、収支報告書の透明性向上を目指したデータベース構築に取り組むとしています。また、旧文通費の使途公開や残金返納に向けた議論を進めるとともに、これらの課題を年内に法整備を含めて解決すると述べ、国民の政治への信頼回復に全力を尽くす考えを示しました。
関連リンク
・第二百十六回国会における石破内閣総理大臣所信表明演説 – 首相官邸(2024年11月29日)