インタビュー

政治資金制度改革:斎藤健・自民党政治改革本部幹事長インタビュー

企業・団体献金は「悪」ではなく公表が大切、少数与党の国会運営「多数野党にも責任」

2024年10月の衆院選は自民党派閥の政治資金収支報告書の不記載問題により、自民、公明両党の与党にとって大逆風となった。先の臨時国会は衆院で与党が過半数割れした状態で迎えることとなり、さらに政治資金制度改革が大きな焦点となった。

斎藤健衆院議員(前経済産業相)は政治資金制度を議論する自民党政治改革本部幹事長を務め、さらに衆院の政治改革特別委員会筆頭理事、予算委員会理事として厳しい国会運営の最前線に立った。政治資金制度改革の成果や臨時国会での論戦などについて聞いた。

インタビューに応じる斎藤健・自民党政治改革本部幹事長

斎藤健・自民党政治改革本部幹事長の発言のポイント

・先の臨時国会では政治資金制度改革について一定の成果
・企業・団体献金は「悪」ではなく、しっかり公表が大切
・第三者機関は国政調査権まで発動できるので透明、信頼性が高まる
・政治資金収支報告書データベース化でどの企業がいくら献金したか検索可能
・国会審議においては「多数野党の責任」も問われなければならない
・政治改革は自民党の新たなガバナンスを作り上げるというテーマも

※聞き手:政策ニュース編集部
インタビューは2024年12月23日に実施しました

献金は見返り求めず

― 先の臨時国会で、大きな懸案だった政治資金制度改革関連法がいくつか成立した。振り返ってどのように評価するか。

(斎藤氏)与野党が提出した法案9本が出そろったのは12月10日の朝だった。そして、それらが衆院を通過したのが12月17日。9本も法案が出される中、短い期間で一定の成果、結論を出すことができたと考えている。

― 立憲民主党などの野党が企業・団体献金禁止法案を共同提出しており、これについては3月末までに結論を出すことを与野党で申し合わせている。

(斎藤氏)自民党は、企業・団体献金が悪であるという立場は取っていない。私は2006年の衆院補欠選挙で落選してから3年4か月浪人生活を送った。落下傘候補であった上、その間は政治活動する資金もままならなかった。しかも当時は自民党の支持率がどんどん下がっており、結果的に政権交代になったほどの究極の状態だったと言え、小選挙区で当選できる可能性が低いとされたときだった。

それでも「斎藤健は未来を託すに足る人物だ」として、個人や会社から資金面での協力を頂いたが、そのような状況の中で献金してくれた方々が見返りを求めていただろうか。見返りを求めておられたとは到底思えない。企業といえども、日本に存在する以上、日本が良い国であってほしいという気持ちを持っておられるだろう。そのために応援してくれるのは、何も悪くはない。

われわれとしては企業団体献金が「悪」だとは思っていない。ただ、疑われることがあってはならないので、しっかり公表することが大切だ。そのために、今回の政治資金制度改正により、公表結果が検索しやすいようにしっかりデータベースを作ることとした。自民党提出法案に入れており、成立した内容だ。そうすれば、企業が誰にいくら献金しているかが一目瞭然となり、いかがわしいものは淘汰されていくことになると思う。

― 政策活動費は廃止が決まった。自民党は非公開とする「公開方法工夫支出」を設けるべきとの立場だったが、最終的には野党に譲歩して取り下げた。

(斎藤氏)政策活動費は大きく2種類あったと思う。私は使ったことももらったこともないが、選挙などで活用していたのではないかと思われるものと、本当に公開できないものだ。例えば外交は、本当に公開できない。政権与党になれば、政府が動けない台湾や、国交がない国は与党が外交をするしかない。そのときに、どこのホテルに泊まったか、どこのレストランでいくら使ったかなどを全部公開することによる弊害がある。

世界の諜報機関を含めて全部オープンにするのはセキュリティを含めいろいろな問題がある。我々の案では、新設する第三者機関に領収書を見せ、適切性をチェックしてもらうとしたが、野党の方々の主張のように、それを世界に丸ごと公開をするので本当にいいのか。

政策で外国人の影響受けない

― 国会に政治資金収支報告書を監視する第三者機関を新設することになった。自民党は行政府に設けるべきだと主張していた。

(斎藤氏)国会に設置しても、国政調査権まで発動できる仕組みにしたので、別に違和感はない。当初、公明党も行政府への設置と言っていたが、公明と国民民主党で提出した法案では国会になっていたということだ。

第三者機関を設置する意義は、国会議員関係政治団体を監視する点にある。いまでも、収支報告書は公認会計士が見ているが、最終的には国政調査権の発動を要請する権限まで持っており、より一層、本法律案では透明性と信頼性が高まる。

― 外国人による政治資金パーティー券の購入は禁止となった。

(斎藤氏)われわれが行おうとする政策が、外国人の影響を受けていないということを、よりはっきりさせる意味で良かったのではないかと思う。

― 政治資金収支報告書をデータベース化するのでデジタル化が加速する。

(斎藤氏)検索を可能とするので、何という企業がどの党の誰にいくら出しているのかがリストで出てくることになる。透明性が一気に高まる。

― 調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の使途を公開し、残金は返納することになった。

(斎藤氏)透明性が高まることで一定の意義がある。

野党と協力して進める

― 先の臨時国会は少数与党で迎えた初の本格的国会論戦であり、与党は「熟議の国会」として野党の意見を取り入れた。

(斎藤氏)全体としては野党の協力を得られない限り、ものごとが進まないということだ。今までの国会とは様変わりとなった。ちなみに政治改革関連法案でいうと、野党が共同提出してきた政策活動費の法案について自民党は賛成した。この法案は立憲民主党、日本維新の会が強く主張していたものだった。

また、第三者機関については、国民民主と公明が提案していた法案に自民党が賛成した。その他は自民案を飲んでもらった。これは一例であるが、今後は野党と協力しながら物事を進めることが必要になってくる。

― 政治改革以外でも、例えば予算委員会なども含めてどのような国会だったか。

(斎藤氏)大変だなと思った。政治改革関連法は議員立法だが、予算などは政府提出だ。政府提出の議案を少数与党で通すのは極めて難しい。少数でも与党なので、政府が出してきたものを通さなければならない責任がある。一方で「多数野党の責任」というものも、これからは問われなければならないと思う。一連の議論を通じで、それを強く感じた。

― 先の衆院選は自民への逆風が大きかった。自民党政治改革本部の果たす役割と意義、政治資金制度改革による自民党の立て直しについて、どう考えるか。

(斎藤氏)政治を変えていくいい機会だと思う。当面は政治資金の話が中心にならざるを得ない。しかし、党改革をどのように行うかというところまで徐々に踏み込んでいきたいと思っている。派閥もなくなっていくわけであり、どうやって自民党のガバナンスを新しく作り上げていくというテーマが、この後に出てくると思う。

― 有権者、国民に訴えたいことと、自民党の立場は。

(斎藤氏)政治とお金の問題で、政治不信を深めてしまったことについて、大いに反省をし、お詫びをしなければならない。一方で国内外を問わず政治の課題は実に重く、広くなっている。その中で責任ある政治を実現しようとすれば、譲れないものもある。自民党だけでなく、与野党で作り上げていくことが求められている。国民の皆さんには、この点をご理解いただければ本当にありがたい。

関連リンク

齋藤健 – 経歴や関連ニュースなど。自民党

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